命令されていないのに
私には、パートナーがいる。
旦那はいるけれど、それとは別に、心も身体も捧げている人がいる。
彼との子どもを育てながら、普段は何食わぬ顔で日常を過ごしている。
けれど、時折彼から呼び出される。
そのたびに、Xやマイファンズに投稿する動画や写真を撮影され、普段の私からは想像もできない、決して人には見せられないような姿をカメラに残される。
数日前、そんな彼からまた呼び出された。
約束の日が近づくと、いつもドキドキが止まらなくなる。
どんなことをされるのだろう。
どんなことをさせられるのだろう。
考えれば考えるほど、身体が熱くなっていく。
ただ、いつも受け身なわけではない。
こんなことをされたい。
こんなふうに扱われたい。
彼との数々の経験を重ねるうちに、私自身にも欲が出るようになった。
もっと単純に言えば、発情するときがある。
だから今回は、家を出る前に自分から準備をした。
誰かに命令されたわけでもない。
彼から指示されたわけでもない。
自分の意思で、肛門に紫色の装飾が付いた栓をした。
そのままミドル丈のワンピースを着て家を出た。

目的地までは電車で30分ほど。
駅まで歩き、何食わぬ顔で電車に乗る。
周囲の誰も、私が服の下に何を隠しているのか知らない。
歩くたびに感じる、普段とは違う違和感。
本来なら不快なはずなのに、このあと待っていることを想像すると、むしろ興奮は増していった。
時期は真夏。
少し歩いただけで身体は汗ばんだ。

けれど、太ももを伝っていたものは汗だけではなかった。
陰部から滲んだ体液が太ももを伝い、くるぶしを越え、素足で履いていたサンダルにまで落ちていた。

これを見たら、彼はどう思うだろう。
命令もされていないのに、勝手にこんなことをして。
もしかしたら、お仕置きされるかもしれない。
そんなことを考えながら、私は彼の待つ場所へ向かった。
そして目的地に着いた。
部屋へ案内され、椅子に腰を下ろした、その瞬間。
――コツン。
鈍い音が響いた。
彼は気づいていたかもしれない。
けれど、何も言わなかった。
その沈黙が、かえって恥ずかしかった。
シャワーを浴び、彼の前で裸になる。
彼は二メートルほど先の椅子に座り、カメラを構えて私を見ていた。
私はそのカメラに背を向け、前かがみになりながらパンツを脱いだ。
そして、そのまま自分の手で身体を開いた。
彼の目の前。
そして、カメラの目の前。
家を出る前から隠していた、紫色の装飾が付いた栓を自分から見せつけた。
命令されたわけではない。
指示されたわけでもない。
栓をしたのも、
そのまま電車に乗ってここまで来たのも、
今こうして自分から見せているのも、
全部、私自身だった。
彼は何も言わない。
カメラも止まらない。
やがて椅子が動く音がして、二メートルほど離れていた彼の気配がゆっくりと近づいてくる。
何をされるのかは、まだ分からない。
背後で足音が止まる。
そして、ここから先は。
私が家を出たときから待っていた時間だった。

